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>>選択式御題 44日目
34.「どもりがちな言葉はいつも途切れ途切れで大切なことを伝えようとするたびに声を失ってしまうだ なんて」




 ふっと一息ついて、20秒ほど経過した頃だった。自動ドアの開く音と入店を知らせる音楽が聞こえ、一瞬遅れて顔をそちらに向けた。その時既に、私のいる世界はがらりと様相を変えていたのであるが、私は即座に反応することが出来ずに「いらっしゃいますふん」などと間抜けな声を出していた。
 ドアの向こうからふらふらと倒れこむようにして私の目の前に立った男。年齢は20代後半から30代くらい。濃紺に薄いストライプの入ったスーツを着ていたが、黄色い派手なネクタイは振り乱され、シャツの裾はズボンからだらしなく溢れていた。髪は長めで、恐らくはオールバックにしていたように思われるが、今は見る影がない。そして顔は真っ赤である。
 「か……っ……か……」
 男は目を血走らせ、息も絶え絶えにうめいた。額にはそれこそ本当に滝のような汗が流れ、顎の先や耳からぽたぽたと水滴が落ちる。
 「ぁいっ」と甲高い不快な音を出したのは私。これは駄目だ、そんな直感が半ば経験的に閃いた。
 人間に限らず、全ての動物は本能の中に天敵の情報を持っている。それに対する危険信号は、今では「生理的に無理」などと気軽に使われているようであるが、その根底には今でもやはり、覆しがたい恐怖が含まれている。私の目の奥と舌の付け根でスパークする直感は、そんな根源的恐怖と、それに触れてはならぬと言う激烈な警告である。
 男の目は飢えた狼だとか、我を忘れたヒグマだとか、そういう次元でない。少し漫画的な表現をするならば、あれは鬼を食らう鬼の形相である。少し触れただけで、いや、触れずとも全てを焼き払い、腐敗させてしまうのではないかと疑わずにはおられない気迫だ。もはや人間などが付け入れるわけもない。ましてや私などに何ができると言うのだ。心臓が動いているというその事実だけで、天地逆転の奇跡である。
 それでも私は震える手に向かって命令を発し続けた。逃げては駄目なのだ。彼の望みを少しでも叶えてやれるとあれば、私は自分の命を賭けてでもそれに貢献せねばならない。私はレジを開いた。どうせ店の金だ、保険が効く。いや、私の金であっても構わない。何なら生命保険でも何でも持っていくが良い。この世界が鬼の手によって蹂躙されることを防げるのならば、そんなものははした金だ。
 私はもたつき、なかなか紙幣をつまみ出すことが出来なかった。鬼はそれを見て忌々しく思ったのか、背を反り返らせ、台を強く叩いた。私の目に涙。鬼の目は更に大きく見開かれる。強盗を通知するボタンの存在を今更思い出したが、もはや手は動かない。全身が命令を聞かない。震える鬼。震える私。世界が終わるのだ。
 17年。それが私の全てだ。現代の日本において、これはあまりにも若すぎる死であろう。むろん、もっと不幸な人たちはたくさんいるだろうが、そんなことは知ったことではない。それはそれなのだ。人は他人の不幸を見て喜ぶよりも、他人の幸福を見て嘆きたがるものだ。どうして私がこんな所で、よりにもよって鬼に喰われて死なねばならぬのだ。第一、鬼のくせに強盗とはやることが小さい。ふざけているのか、遊んでいるのか。私はもてあそばれているのか。情けないことだ。
 ともだちに借りたCDをまだ聞いていないな、などということが脳裏をよぎった。人は窮地に立たされると脳の回転が異常に速くなり、外界の全てがスローになるというのは本当なのだな、などということも脳裏をよぎった。
 CDも口惜しいが、惚れた男に思いを告げることもまだしていない。これでは何のために生まれてきたのか分からないではないか。私は神様を罵った。
 ああそれから、毎週楽しみにしている刑事ドラマがあと2回で終わるというのに、こんな所で打ち切られてしまうのか。そのドラマに出てくる、執拗なまでに正義感を前面に押し出す若手女刑事のように、たとえ空回りであっても、たとえ無残に食い殺される結果に変わりはなかろうとも、鬼に対して一つ抵抗でも出来ればよかったのだが、相変わらず体は動かない。服従も抵抗もしないとあっては、これは爬虫類の抜け殻と変わらない。鼻の向こうでずっと警報は鳴り続けているというのに! 遺伝子は矛盾だらけだ。
 鬼はますます大量の汗を流し、真っ赤な顔は見る見るうちに青くなっていった。赤鬼は青鬼を兼ねるらしい。
 「かっ……!」
 私は顔の表情筋すら硬直し、埴輪のように呆然と突っ立っていた。
 「かわ……やっ!」
 金が欲しかったのではなかったらしい。それではカワヤとは一体誰のことであろう。それが彼の求める餌なのだろうか。少なくとも私はカワヤではないし、知り合いにもそんな名はいない――まさか私の名札に書かれた「野川弥生」を中途半端に拾い読んでみたわけでもあるまい――。しかし恐らくそんなことは関係ない。私がカワヤでないと知ったれば、それはそれで私を食い殺す理由の、重大な一つとなるのだ。
 鬼の目が更に大きく見開かれた。
 叫び。
 何秒続いたことだろう。恐らく10秒程度であるが、私の脳は高速回転中であるがゆえ、その間もあれこれと考え続けた。数々の思い出、夢、感謝に怨嗟。
 鬼の顔が見る見るうちに薄いピンクになり、黄色くなり、目が細まり、汗が止まり、震えが止まり、もう一度少し震え、少し笑い、私は昏倒した。




   かんれん!

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