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>>選択式御題 42日目
46.「お前と俺は出逢ったのです」

 カンカンカン。
 踏切の音が小さく聞こえた。まだ少し遠いのである。赤い点滅が小さく見える。これは余程の注意を向けぬ限り、多少近づいてもやはり小さいままである。
 私は歩を進めた。速めたと言う方が妥当かもしれない。規則的な音に釣られたのである。この場合、赤い点滅には決して支配されない。あれには何の魅力もないのだ。カンカンカンという音だけが、私の呼吸を乱すのである。
 珍妙な姿勢であったに違いない。音が近くなる。高くなる。寒い、空気の澄んだ夜に何故だかよく馴染む音だ。
 やはり、点滅に対する印象は変わらなかった。
 私はこの踏切を知っている。いや、これは知っているなどとは言えない。そこにあるという、ただそれだけのことを知っているに過ぎず、その名称だとか、製作元だとか、ここを通る電車に知らせる距離標等の場所、内容、意味するところ、路線名、曜日や時間ごとにおける通過の頻度、緊急時の連絡先などは一つも分からない。よくよく思えば、本当にここに踏切があるのかどうかさえ疑問だ。取り返しのつかない幻想の類のようにさえ思われる。夢なのか。ああ、私は夢の中に遊んでいるのか。ふと目を開けば、そこはどこか小さなアパートのゴミ捨て場で、明らかに私が倒れたあとに投げ込まれたであろう半透明の大きなビニル袋が、竹馬の友のごとく、この身を暖めているのではないか。だとすれば、私はなんと幸福なることか。神よ、愛と慈悲とによって、この老いぼれに半透明の友を与えよ!
 私は叫びたい気持ちだった。ただし、決して叫ばないのである。その自制が、踏み切り目指してずりずりと行進する今がどうやら夢ではないらしいということを知らしめている。確証はないが、一先ず信じねばならないようだ。
 ふと、記憶が蘇った。よく聞くような、雷に打たれたようなといった激しさはない。せいぜい、車が小石を蹴るのをその車内で感じる時の不快感と似た程度の刺激だ。第一、私は雷に打たれたことがないので、それは想像できない。さて、では一体何を思い出したか。
 この踏み切りは、もう一つある。
 ただ、それだけのことだ。この新たな記憶は、夢でないことの有力な証拠にはなりえぬが、とは言え、やはり心強いものである。藁をも掴む、ということか。勇気を得た私はカンカンのリズムに逆らい、独自の呼吸を取り戻そうと苦心した。聞こえない振りをして勝手に歩くのは、私にとって難しい事ではない。それどころか、常に周囲の音に左右されてしまう私は、手を使わずに耳を塞ぐことが得意技ですらある。意識すれば、心を閉ざしてしまうのは容易なのだ。だが私はこの日、その得意技を使いたくなかった。カンカンを無視して戦闘を拒否するのではなく、真っ向から反乱を起こして勝利したかったのである。しかしこれは問題だ。何故なら、カンカンに逆らおうと頑張ってそれを成功しさせたところで、それはカンカンに逆らった挙句に得られた呼吸に過ぎず、つまり私の呼吸ではないということになるからだ。私は愕然とした。私は逃げ出すか、そうでなければカンカンに操られ踊らされる他にないのだ。これが現実だとすれば、なんと馬鹿馬鹿しい生涯であろうか。こんな残酷な仕打ちはない。ゴミ捨て場の友に裏切られ、しかもクッキーの欠片を与えられるような侮辱の方がまだしもだ。
 私は踏切りを睨みつけ、地団太を踏む思いで歩いた。
 何のことはなかった。
 私は即座に自分の呼吸を取り戻していたのである。
 耳を塞いだつもりはない。ただ、歩いたのだ。
 カンカンと歩行のリズムは全く連動していなかった。無論、長いサイクルで見れば実は完全に同期してるはずだが、局所的に相違があれば充分だ。完璧は求めぬ。それが不可能であることくらいははじめから承知している。
 私は私のリズムで以って意気揚々と踏切へ近づく。下りのレール、上りのレール、わずかばかりの道路、そしてまた踏切が見える。私の記憶に間違いはなかった。都合の良い夢であるという疑念は打ち捨て、喜びを噛み締めた。
 その時、突如として奥の踏切が作動し始めた。カンカンと点滅が起こり、警告色のバーがゆっくりと降りてゆく。私は唾を飲み込んだ。二つの踏み切りはカカカンカンカンとわけの分からぬ叫びを発し、点滅もあちこちから狂ったように迫ってくる。私の歩行はまたしても乱されたのだ。しかも今度は、音に合わせたくても合わせられない有様だった。
 遂に私は立ち止まってしまった。
 瞼の裏でサイケデリックな乱舞が披露され、死にたくなった。そうだ、死のう。夢であれ現実であれ、とにかくこの状況を打破するにはそれしかない。耳を塞いで逃げてしまえば済むのかも知れぬが、それだけは願い下げである。そうだ、死のう。名誉ある最期を遂げてやろう。
 薄い笑みを浮かべ、足を引きずるようにして、遂に踏切の目前までやってきた。歩行のリズムも、呼吸のタイミングも、ぐちゃぐちゃだ。構わない。どうだって良い。
 すぐそばのカンカンと、少し向こうのカンカンとが喧嘩しているように感じられた。点滅はもう全くわけが分からない。理解したいとも思わないので、放っておく。あれはくだらぬ。
 ここまで来て、踏切と踏切の間の申し訳程度の道路に、人が立っていることに気が付いた。青年のようである。惨めな気持ちに浸っているに違いないと、私は決め付けた。彼は逃げることも戦うことも適わないのだ。ただひたすらに、カンカンと点滅に挟まれた哀れな己を静かに慰めることしか出来ない。馬鹿なやつだ。永遠にそこに立ち尽くすが良い!石になってしまえ!風化することもなく、脈のリズムさえ捨てた石に!
 私はといえば、警告色のバーをひょいと持ち上げ、踏切の中に侵入し、下りのレールの上に立ち尽くした。永遠に!


   かんれん!

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