ようこそ!



最近の記事傾向→
 映画見て
  マリオを走らせ
   あとは寝る
    ('A`)オー

web拍手


かてごり!


けんさく!


まいちゃん!

mastermind

  • Author:mastermind
  • 動画担当:sistermind
    駄文担当:桝田舞人
    花の小2トリオ(=゚ー゚)8さいになりましたv

りょこう!


こめんと!


とらばく!


さいしん!


べったく!


げっかん!


らすえす!


あまぞん!





上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
>>選択式御題 36日目
21.「乞うことにも乞われることにも慣れてしまったあんたのひたむきさ 忘れてしまった何か」  薄汚れた川をまたぐ小さな石橋のちょうど真ん中あたりに、特に必要性を感じさせないベンチが設置してある。青く塗装されていたはずのベンチは今、街灯によって錆びた醜い本性をさらけ出している。時々それをあざ笑うように物静かな車が橋の上を通り抜けた。Rにとってもそのベンチは卑下の対象でしかなかったのであるが、今夜はそこに一人の老人の姿があった。老人を見つけた瞬間、Rの中に特別な感情が走ったように思われた。それが何であるかを思案してみたが、どうやら浅からぬ電撃は記憶の奥底、いや、正確には奥底の記憶といった所から発生したようである。Rには自分でも何の事だかさっぱり分からなかったのだが、少なくとも嫌な感じはしなかった。くたびれた帽子を深く被った老人はRにとって敵ではなさそうだ。それは予感というよりも思い込み、むしろ思いつきであるのだが、同時に名状しがたい確信めいた記憶のようでもあった。
 Rは吸い寄せられるように老人へと近づいた。
 老人はRの接近に対して全くの無反応で、ただ延々と肩で息をしている。体の調子でも悪いのだろうかと、Rはベンチの前にしゃがみこみ、老人をよく観察しようと試みた。目は帽子の中に完全に隠れてしまっているほどで、大きな鼻の下には白い髭が立派にたくわえられている。血色は悪く、口からははあはあと荒い息が漏れていた。Rは老人の肩に手を置いて話しかけた。
 「しっかりしなさい、いったいあなたは病気なのですか」
 老人は僅かに顔を上げ、やけに深みのある声で答えた。
 「おや、これは変わったお人だ。わしに声をかけるなどどういう了見です。ふふ、なんとも愉快ではありますがね。ええ、それでなんでしたかな、そう、病気。ふふ、わしは病気になどかかりやしませんよ。そうとも、生まれてこの方一度もお目にかかったことがありませんや。病気の方で私から逃げていく有様でしてな。当然です。ま、人様のそれは嫌と言うほど見てきましたがね。ふふ」
 苦しそうに喘ぎながらそんなことを言うものだから、Rは何となく馬鹿にされたように思ったのであるが、気を取り直して質問を続けた。
 「それではお怪我をなさっておるのでしょう。どれ、ぼくにお見せなさい。ぼくは医者ではないが、今すぐ病院へ連れて行くべきか、それともちょっとした手当てで済みそうかの区別くらいはつけられると思いますよ。あなたの状態を見る限り、どうもぼくなどでは手がつけられないような怪我をなさっておられそうですが、万事はその患部を実際に見てみないことには分かりませんからね。ははあ、このベンチに座り込んでいるということは、足を悪くしたのでしょう、そうでしょう。え、さあ、お見せなさい」
 妙にボリュームのあるズボンの裾にRが触れようとすると、老人はそれを左手を差し出すことで静かに禁止した。Rにはその手を払いのけて裾をたくし上げることが出来なかった。おとなしく手を引っ込めると、何も言わずに老人の横へと腰掛けた。
 目の前を過ぎていく車を三台ほど見送ってから、Rは口を開いた。
 「病気でもない、怪我でもない。となればいったいあなたは何なのです。まさかこんな所で呼吸法の実験をなさっているわけでもありますまい。いったい何を苦しんでおられるのです」
 「あなたは本当におかしな人だ。今どき珍しいですよ。御覧なさい、車はまあ、仕方が無いとしても、先ほどからこの橋を何人かの人々が渡っていますが、誰一人としてこのベンチに注目するものはおりません。希薄なんですよ。人に興味を与えない、関与しない、主張しない。自分がベンチであることすら忘れてしまいかねないほど、希薄なんですよ。ふふ、そこにあなたは座っておられる。不思議な人だ」
 「話が見えませんよ」とRは不平をもらした。
 「あなただって座っておられる。ぼくはベンチもあなたも見つけたし、そこを歩いている人や車だって、その気になれば見つけられます。それに大体、そんなことがあなたの体調に何の関係があるのです」
 「わしはこのベンチと同じ、いやそれ以上に希薄なんです。だからわしから見れば、このベンチは光り輝いていると言って良い。ふふ、わしは希薄どころか、もう殆ど消滅していますからね」
 Rは何事か悟ったかのような老人の馬鹿げた答えにかっとなった。
 「何です、希薄というのはつまり、その主張だとか興味だとか、そういうもの、或いは対象としてのことを仰っておられるようですな。つまり、何です。あなたを見つけ出して余計なおせっかいまで働こうとしたぼくはもっと希薄でつまらない人間だとでも言うのですか。馬鹿馬鹿しい。酷い言いがかりだ。話しの種にもなりやしない」
 「誤解なさってはいけません。あなたは全然希薄なんかじゃありませんよ。このベンチがベンチたりえるのも、あなたの持つ影響力と言ったもののお陰でしょうよ。光がなければ何も見えなくなるでしょう?あなたはこのベンチにとっては光であり、しかも目でもあるのです。そこの街灯を消し去ったとしても、あなたはきっと手探りでベンチを見つけるでしょうが、反対にあなたがいなくなって街灯が取り残された場合、このベンチは世の中から消えてしまうに違いない。そこには目がありませんからね」
 Rにはこの問答を続ける気力はなかった。いっそのことおもむろに立ち上がって駆けて行ってベンチも老人も消し去ってやろうかなどという想念がわいたが、しかしその馬鹿げた考えに反発する形で尚もベンチに座り続けた。下の川から蛙の声が聞こえ、僅かにそちらへと注意がそれた。
 「ふふ、お優しい。昔はね、みんなそうでした」
 老人はそういうと、ジャケットのポケットから古びた手帳を取り出した。
 「これはね、ほんの二百年前の成果です」
 そういって老人があるページを開くと、巨大なホログラムが展開された。幅は2メートルほどだが、高さは全く分からない。暗い夜空に向かって伸びたホログラムの天辺をRには視認できなかった。無限の壁のごときそれには、恐ろしく小さな文字がびっしりと刻まれている。あまりの小ささゆえに、これもRには正しく解読することが出来ないほどだ。目を丸くしたり細めたりしているRに満足したのか、老人はそのページを閉じた。Rは今まで仕事の書類どころか、百貨辞典等でもこれほどの巨大な一ページを見たことはなかった。
 「今のはある国での仕事です。実際には世界中全部が相手ですから、こんなものじゃありません」
 Rがあっけに取られていると、老人はまた別のページを開いた。が、ホログラムは現れなかった。Rが手帳の中を覗き見ると、それは白紙であった。
 「これが今年の仕事。ゼロですよ、ゼロ。世界でね。ふふ、でもね、わしの仕事が求められなくなるというのは、つまり世界中が安定していて、幸福で、しかも自由である証拠なんです。このベンチはまだ、誰かの足を休めることが出来ますが、わしにはもう何も出来ません。必要がないのです」
 Rは少しばかり考え込んで、たずねるのだった。
 「去年はどうだったんです」
 老人は黙って、また別のページを開いた。今度は小さなホログラムが現れ、外国の文字で幾つか書き込まれているのが判った。そして、そこにRが普段から読み書きしている文字種も見分けられた。
 「7件です」
 老人は寂しそうにそう呟くと、手帳を閉じ、ポケットへとしまいこんだ。
 「一つお願いがあるのですが」とRは老人の方へ向かって言い出した。
 「二十年ほど前に公開された映画でね、当時ですら考えられなかったんですが、五感接続すらしない時代錯誤の作品があるんです。ただ目で見るだけの、子供だましにもならない映画です。関連会社も軒並み潰れてしまった今となっては、ほぼ完全に無かったことにされているような、どうしようもない映画でね。公開と同時に発売された関連商品も意味なく時代に逆行しようとしたものばかりで・・・・・・ただ、その映画に登場するロボットがいましてね・・・・・・大きいやつです。これの玩具が欲しかったんですよ、ぼく。でも両親に頼んでも、こんな古ぼけたものより良い物が他に幾らでもあるだろうって具合で、買ってもらえなかったんです。そりゃあそうです、骨董的価値もなければレトロとか言うのとも違う、本当にどうしようもない駄作でしたからね。実際、タイトルも思い出せませんよ。子供心にもそれは尤もだという気持ちもあったんですがね、やはり、今でも時々思い出すんですよ。自分でも探したんですが、みんな処分されてしまったのか、全然見つかりません。もしかしたら夢でも見たんじゃないかと思うくらい、人に聞いてもそれらしい映画も見つけられないんです。玩具なんて地球上のどこにも最初から存在してないんじゃないかと疑わずにはいられません。お願いと言うのはつまり、その玩具を探し出して・・・・・・いえ、ぼくにください。あとそれから、ぼくの子供がね、ゲームソフトを欲しがってるんですがね、これは小遣いで買おうと思えばいつだって買えるみたいですが、何と言うか、つまり、それもください」
 「あなたは本当に変わったお人だ」
 Rがベンチから降りると、ベンチが僅かに浮き上がり、老人は手帳にRとその息子の名を刻んだ。
   かんれん!

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

件のトラックバック

トラックバックURL
http://mastermind.blog6.fc2.com/tb.php/2455-ed6d8e6e
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

 | BLOG TOP | 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。