>>MOTHER3 のべらいず計画その10
まだ諦めてなかったのか(´゚д゚`)(ぉ
第1章〜とむらいの夜〜
-9-
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テリの森は全体が木で覆われているわけではない。それは村の誰もが知っていることで、山火事が起こったならば、木々を避けてどこか岩場に避難している可能性は高い。
そう思って岩がけの下をたどっていくと、聖堂にいるはずのヨーネルを発見した。
「おぉ、フリント。留守番はウエス爺さんに任せて俺も探しに来たんだ。それより見ろよ、あれ」
ヨーネルが指差した先はただの岩がけであったが、よく見ると何かおかしい。
「あれは・・・」
暗くて分かりにくいが、硬い岩を巨大なピッケルでえぐったような跡が見える。4本の縦傷が一つのグループとなって、そのグループは上へ上へと向かっているように見える。
「ドラゴがここを上っていったんだろう」
なるほど、傷は巨大な爪あとのようにも見える。
「おかしいだろ?」
「・・・そうだな・・・・」フリントはあごひげを触りながら、ぼんやりと答えた。
ドラゴは巨大で、人間から見れば化け物といっても良いだろう。岩山をえぐりながら登ることも簡単だ。が、ドラゴはおとなしく友好的な生き物で、更に人間の真似をしたがる傾向がある。ドラゴたちはタツマイリの人々と同じく、「道」を通るのだ。岩山を強行突破したことなど聞いたこともなく、事実、この場所以外にドラゴの爪あとなど一つも存在しない。
「森と人と動物とわしに何かとても良くない事が起きているような気がする・・・」
ヨーネルはちゃっかり自分本位な意見を述べつつ、ため息をついた。
と、それまで大人しくしていたボニーが突然吠え出した。
「上に何かあるのか・・?」
ヨーネルとフリントは目を細め、ボニーの視線を追った。岩がけはおよそ15メートルほどで、その後は平地になっている。星の見えない薄暗い夜空が不気味に迫っていた。
「おい、フリント・・ありゃ何だ?」
岩がけの鉄片に力強く生えている木。その枝の先で葉っぱではない何かがヒラヒラと動いていた。
「ボニー、あれがどうかしたのか?」
ボニーは呼びかけるようにひたすら吠えまくっている。リュカやクラウスならばボニーの言ってる事が何となく見当がつくが、フリントには「腹減った」くらいしか分からない。
二人と一匹が呆然と崖の上を見上げているところ、「どうかしたのか?」と背後から声をかけてきたのは、聖堂で待っている筈のウエスだった。
「何だ爺さん。あんたまで来たのか。残念だが年寄りが一人増えたところで何の訳にも立たんよ」
ヨーネルは容赦なく罵るが、「お前も対して役に立っておらんだろうが」とウエスの方でも鼻を鳴らしながら言い返す。二人は別に仲が悪いわけではなく、いつもこの調子なのだ。
「上に行きたいのか・・?」
正確には崖の上の木に引っかかってる物の正体と、ドラゴの行き先、その目的が知りたい。しかしこの崖の上に通じる道は存在しておらず、かといってこんな場所を上れるような人間はタツマイリにいない。だからこそドラゴは普段から崖を上ったりしないのだが。
「わしゃ役に立たんが、もしかすると息子が役に立つかも知れんな。ちょいと呼び出してみるか」
ウエスの表情には、なにやら余裕らしきものが見える。
「おいおい・・・ダスターは脚が不自由なんだろ?こんな崖をどうしようってんだ」
「ん・・・あ・・」
突如、ボニーが走り出した。
「何だ?お前が呼んできてくれるのか?」とウエスが大声を張り上げると、一声「ワン!」と返してあっという間に見えなくなった。
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テリの森は全体が木で覆われているわけではない。それは村の誰もが知っていることで、山火事が起こったならば、木々を避けてどこか岩場に避難している可能性は高い。
そう思って岩がけの下をたどっていくと、聖堂にいるはずのヨーネルを発見した。
「おぉ、フリント。留守番はウエス爺さんに任せて俺も探しに来たんだ。それより見ろよ、あれ」
ヨーネルが指差した先はただの岩がけであったが、よく見ると何かおかしい。
「あれは・・・」
暗くて分かりにくいが、硬い岩を巨大なピッケルでえぐったような跡が見える。4本の縦傷が一つのグループとなって、そのグループは上へ上へと向かっているように見える。
「ドラゴがここを上っていったんだろう」
なるほど、傷は巨大な爪あとのようにも見える。
「おかしいだろ?」
「・・・そうだな・・・・」フリントはあごひげを触りながら、ぼんやりと答えた。
ドラゴは巨大で、人間から見れば化け物といっても良いだろう。岩山をえぐりながら登ることも簡単だ。が、ドラゴはおとなしく友好的な生き物で、更に人間の真似をしたがる傾向がある。ドラゴたちはタツマイリの人々と同じく、「道」を通るのだ。岩山を強行突破したことなど聞いたこともなく、事実、この場所以外にドラゴの爪あとなど一つも存在しない。
「森と人と動物とわしに何かとても良くない事が起きているような気がする・・・」
ヨーネルはちゃっかり自分本位な意見を述べつつ、ため息をついた。
と、それまで大人しくしていたボニーが突然吠え出した。
「上に何かあるのか・・?」
ヨーネルとフリントは目を細め、ボニーの視線を追った。岩がけはおよそ15メートルほどで、その後は平地になっている。星の見えない薄暗い夜空が不気味に迫っていた。
「おい、フリント・・ありゃ何だ?」
岩がけの鉄片に力強く生えている木。その枝の先で葉っぱではない何かがヒラヒラと動いていた。
「ボニー、あれがどうかしたのか?」
ボニーは呼びかけるようにひたすら吠えまくっている。リュカやクラウスならばボニーの言ってる事が何となく見当がつくが、フリントには「腹減った」くらいしか分からない。
二人と一匹が呆然と崖の上を見上げているところ、「どうかしたのか?」と背後から声をかけてきたのは、聖堂で待っている筈のウエスだった。
「何だ爺さん。あんたまで来たのか。残念だが年寄りが一人増えたところで何の訳にも立たんよ」
ヨーネルは容赦なく罵るが、「お前も対して役に立っておらんだろうが」とウエスの方でも鼻を鳴らしながら言い返す。二人は別に仲が悪いわけではなく、いつもこの調子なのだ。
「上に行きたいのか・・?」
正確には崖の上の木に引っかかってる物の正体と、ドラゴの行き先、その目的が知りたい。しかしこの崖の上に通じる道は存在しておらず、かといってこんな場所を上れるような人間はタツマイリにいない。だからこそドラゴは普段から崖を上ったりしないのだが。
「わしゃ役に立たんが、もしかすると息子が役に立つかも知れんな。ちょいと呼び出してみるか」
ウエスの表情には、なにやら余裕らしきものが見える。
「おいおい・・・ダスターは脚が不自由なんだろ?こんな崖をどうしようってんだ」
「ん・・・あ・・」
突如、ボニーが走り出した。
「何だ?お前が呼んできてくれるのか?」とウエスが大声を張り上げると、一声「ワン!」と返してあっという間に見えなくなった。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その9
第1章〜とむらいの夜〜
-8-
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はっと顔を上げると、いつのまにか雨はやんでいた。軒先でしゃがみこんでいるうちにうたた寝してしまったらしく、腰が痛い。
もしかして全部夢だったのか?などと考えてみようとしたが、それならばこんな所で一人座っている筈は無いのだ。
じっとしている訳にはいかない。フリントは立ち上がって帽子をかぶりなおし、村へ向かって歩き出した・・・と、愛犬のボニーが立ちふさがる。
「ん、何だ?お前もくるか?」
ボニーは一声上げるとフリントの先に立ち、走り出した。
「ヨーネル!」
聖堂の壁にもたれかかって空を見上げる男に声をかけた。ヨーネルはタツマイリの村を仕切る、いわば村長である。髪は真っ白になっているが、実は意外と若い(らしい)。
「フリント、来たか。グループに分かれてヒナワさんたちを探すよう、指示を出しておいた。まったく、お前は親切な友達に恵まれているな。幸せものだよ」
肩を叩かれながらそう言われても、幸せを噛みしめている余裕などは無い。フリントはすぐに森へと入っていった。
森の中は燃えた木々とそれを無理やり消化した雨によって、湿気と独特の匂いに満ちていた。地面はぬかるみ、場所によっては沼のように足が沈む。夜もふけてきて、本当ならば人命救助に乗り出すべき状況ではないのだが、タツマイリの人々はそんな理屈を持たない。
大事な仲間たちが困っている・・・・行動に駆り立てるには、十分な動機だ。
森は荒れていたが、それでも村人たちがあちらこちらを探し回った挙句、いくつかの小道のようなものが出来上がっている。フリントはその中の一つを適当に選び、いったん誰かと合流しようと考えた。
少し進むと、すぐにバトーとブロンソンを発見できた。
「あ、フリントさん。これ見てくださいよ・・・雷なんかじゃなくて、誰かがへし折ったように見えるんだけど・・・」
ブラウンの前髪が少々伸びすぎて視界の悪そうなバトーが指差す先には、なるほど、不自然に折り曲がった巨木があった。雷が落ちたとか炎に巻かれたとかならば木の全体に焦げ後があるだろうし、葉も焼けていて当然だと思われる。しかしこの木にはそんな痕跡は無く、何の前触れも無くへし折られたかのように見えるのだ。
テリの山で起きた火事。そこで飛び回る謎の虫とネズミ。そして豚面の何者か・・・更にイサクが聞いたという、ドラゴの叫び、悲鳴・・・。
フリントには村の人々がそれらの事をどこまで知っているか分からないが、無用な混乱を避けるためにも言わないほうが良いと思った。だが、それでは情報は集められない・・・一体どうすれば良いのか?
何が起きているのか、何をすべきなのか、フリント自身にも・・誰にもわからないのだ。
「ここを進むのはちぃときついな・・・」
ブロンソンが諦めかけた時、背後から威勢のいい声が聞こえた。振り返るとイサクとフエル、それに角材を杖代わりにしたライタだった。
「おいライタ、そんな足で無茶するんじゃねぇよ」
「バカヤロー!俺はいつだって大丈夫なんだ。けが人扱いしないでくれ!」
「この調子で全然言うこと聞いてくれねぇんだよ」とイサクもやや呆れ顔だが、無理に止めようとしている風にも見えない。村のみんながヒナワとリュカ、クラウスを、そしてフリントを心配しているのだ。
「こんなもんは俺に任せとけ。ソッコーでばらばらにしてやる」
と意気込むが、足を怪我していたのでは踏ん張りが利かず、思うように力も入らない。
「てめーらも手伝え!」
バトーとブロンソン、フエルは、イサクが抱えてきたノコギリやら斧やらを手にして巨木に立ち向かう。
「ここは俺たちに任せろよ、な」
そう言って白い歯を見せるライタはなかなかに頼もしかった。フリントは彼らを残し、別ルートをたどることにした。
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はっと顔を上げると、いつのまにか雨はやんでいた。軒先でしゃがみこんでいるうちにうたた寝してしまったらしく、腰が痛い。
もしかして全部夢だったのか?などと考えてみようとしたが、それならばこんな所で一人座っている筈は無いのだ。
じっとしている訳にはいかない。フリントは立ち上がって帽子をかぶりなおし、村へ向かって歩き出した・・・と、愛犬のボニーが立ちふさがる。
「ん、何だ?お前もくるか?」
ボニーは一声上げるとフリントの先に立ち、走り出した。
「ヨーネル!」
聖堂の壁にもたれかかって空を見上げる男に声をかけた。ヨーネルはタツマイリの村を仕切る、いわば村長である。髪は真っ白になっているが、実は意外と若い(らしい)。
「フリント、来たか。グループに分かれてヒナワさんたちを探すよう、指示を出しておいた。まったく、お前は親切な友達に恵まれているな。幸せものだよ」
肩を叩かれながらそう言われても、幸せを噛みしめている余裕などは無い。フリントはすぐに森へと入っていった。
森の中は燃えた木々とそれを無理やり消化した雨によって、湿気と独特の匂いに満ちていた。地面はぬかるみ、場所によっては沼のように足が沈む。夜もふけてきて、本当ならば人命救助に乗り出すべき状況ではないのだが、タツマイリの人々はそんな理屈を持たない。
大事な仲間たちが困っている・・・・行動に駆り立てるには、十分な動機だ。
森は荒れていたが、それでも村人たちがあちらこちらを探し回った挙句、いくつかの小道のようなものが出来上がっている。フリントはその中の一つを適当に選び、いったん誰かと合流しようと考えた。
少し進むと、すぐにバトーとブロンソンを発見できた。
「あ、フリントさん。これ見てくださいよ・・・雷なんかじゃなくて、誰かがへし折ったように見えるんだけど・・・」
ブラウンの前髪が少々伸びすぎて視界の悪そうなバトーが指差す先には、なるほど、不自然に折り曲がった巨木があった。雷が落ちたとか炎に巻かれたとかならば木の全体に焦げ後があるだろうし、葉も焼けていて当然だと思われる。しかしこの木にはそんな痕跡は無く、何の前触れも無くへし折られたかのように見えるのだ。
テリの山で起きた火事。そこで飛び回る謎の虫とネズミ。そして豚面の何者か・・・更にイサクが聞いたという、ドラゴの叫び、悲鳴・・・。
フリントには村の人々がそれらの事をどこまで知っているか分からないが、無用な混乱を避けるためにも言わないほうが良いと思った。だが、それでは情報は集められない・・・一体どうすれば良いのか?
何が起きているのか、何をすべきなのか、フリント自身にも・・誰にもわからないのだ。
「ここを進むのはちぃときついな・・・」
ブロンソンが諦めかけた時、背後から威勢のいい声が聞こえた。振り返るとイサクとフエル、それに角材を杖代わりにしたライタだった。
「おいライタ、そんな足で無茶するんじゃねぇよ」
「バカヤロー!俺はいつだって大丈夫なんだ。けが人扱いしないでくれ!」
「この調子で全然言うこと聞いてくれねぇんだよ」とイサクもやや呆れ顔だが、無理に止めようとしている風にも見えない。村のみんながヒナワとリュカ、クラウスを、そしてフリントを心配しているのだ。
「こんなもんは俺に任せとけ。ソッコーでばらばらにしてやる」
と意気込むが、足を怪我していたのでは踏ん張りが利かず、思うように力も入らない。
「てめーらも手伝え!」
バトーとブロンソン、フエルは、イサクが抱えてきたノコギリやら斧やらを手にして巨木に立ち向かう。
「ここは俺たちに任せろよ、な」
そう言って白い歯を見せるライタはなかなかに頼もしかった。フリントは彼らを残し、別ルートをたどることにした。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その8
第1章〜とむらいの夜〜
-7-
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悲鳴?悲鳴って何だ?誰の?何のための?
イサクの中に潜む、わけのわからない不安と恐怖がフリントに伝播する。なぜか胸が高鳴り、瞬きが出来ず、思考が止まる。
フリントは猛スピードで宿屋を飛び出し、家まで全力で走った。大きな水溜りを迂回するのも面倒くさい・・・いや、むしろそんなものは目に入らなかった。
どうして?何をそんなに慌てる必要がある?
わからない。だが、フリントは走った。トマスにつれられて森へ向かった時のような「大したことは無いだろう」と言う根拠の無い自信は一切沸かず、今はただ、不安だけが心を塗りつぶしていく。
戻ると、軒先に一羽の伝書鳩が羽根を休めていた。その細い脚には手紙がくくりつけられている。
小さく丸められた手紙を広げる手が震えて、もどかしい。
「フリントへ。
あなたが言った通り、子供たちはこちらへ来てからずっと疲れしらずで野山を走り回っています。
相変わらずクラウスは元気すぎて危なっかしいし、リュカはまだちょっと甘えん坊でしたよ。でも、二人ともまだまだ遊び足りないようです。
父も久しぶりに会えた孫たちと別れるのは寂しいみたいだけど、今日の夕方までには帰ることにしました。
久しぶりの山の空気はとても綺麗で気持ちいいの。いつもタツマイリの村で羊の匂いにまみれているあなたにもこの空気を吸わせたかったな。
今度来るときは羊たちの世話をご近所さんにお願いして家族みんな出来ましょうね。
クラウスもリュカもわたしも、あなたのこといつも思い出していたんですよ。夕方うちに帰ったら、さっそく腕によりをかけておいしいご飯を作るわね。
あなたと子どもたちのヒナワより」
帽子のつばから滴り落ちる雨水で手紙のインクがわずかににじむ。このまま無かったことになれば良いのに・・・今日という日が夢か冗談なら良いのに・・・
突然宿から飛び出したフリントを見て心配になったフエルも連れ、イサクが追いついた。フリントの家に明かりは燈っておらず、手紙を凝視したまま呆然と立ち尽くす彼をを見れば状況はすぐに解った。
「そうか、まだ・・・だったんだ。雨に濡れて風邪、ひいちゃうかもな・・・」
楽観的な物言いが演技であることはフリントにもわかる。二人は今、言い知れぬ不安でいっぱいで、「どうせ大丈夫だろ」という考えがどうにも浮かばない。火事の一件が彼らを弱気にさせているのだろうか。
夕方にこちらに着く予定だったというヒナワたち。トマスがフリントの家のドアを乱暴に叩いたころ、本当ならヒナワたちは帰宅しているはずだった。だが、その時間はヒナワたちはおろか、伝書鳩でさえも家にたどり着いていない。
テリの森に異変があったからだ。
しかし、イサクは昼にヒナワたちを見かけている。彼がこうして当たり前のようにタツマイリにいるのだから、ヒナワたちもまた当たり前のように戻ってきていてもおかしくない筈ではないか?
火事の前にも何かが起こり、伝書鳩もヒナワたちも足止めを食った?
ドラゴの叫び声って?
そのあと聞こえた悲鳴って?
森で一体、何が起こったというのだ?
事情を知っていそうな唯一の存在である鳩は、小さな声を出しながら首を振り、愛嬌を振りまいている。
「ぼく、迎えに行くよ!」
フリントに助けられたフエルは、今度は自分が助ける番だとでも言うかのように意気揚揚と立候補した。
「どこかで雨宿りしてるか、アレックさんの所に戻ってるんだとは思うけど・・・念のために探しに行ったほうが良いな。村のみんなにも手伝ってもらおう。お前は少し休んだほうが良いぞ」
そう言ってイサクとフエルは宿のほうへ向かって走り去った。
一人残されたフリントは降りしきる雨を見上げる。いつもは綺麗な星空なのに、今日は暗くよどんでいて、よく見えなかった・・・・。
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悲鳴?悲鳴って何だ?誰の?何のための?
イサクの中に潜む、わけのわからない不安と恐怖がフリントに伝播する。なぜか胸が高鳴り、瞬きが出来ず、思考が止まる。
フリントは猛スピードで宿屋を飛び出し、家まで全力で走った。大きな水溜りを迂回するのも面倒くさい・・・いや、むしろそんなものは目に入らなかった。
どうして?何をそんなに慌てる必要がある?
わからない。だが、フリントは走った。トマスにつれられて森へ向かった時のような「大したことは無いだろう」と言う根拠の無い自信は一切沸かず、今はただ、不安だけが心を塗りつぶしていく。
戻ると、軒先に一羽の伝書鳩が羽根を休めていた。その細い脚には手紙がくくりつけられている。
小さく丸められた手紙を広げる手が震えて、もどかしい。
「フリントへ。
あなたが言った通り、子供たちはこちらへ来てからずっと疲れしらずで野山を走り回っています。
相変わらずクラウスは元気すぎて危なっかしいし、リュカはまだちょっと甘えん坊でしたよ。でも、二人ともまだまだ遊び足りないようです。
父も久しぶりに会えた孫たちと別れるのは寂しいみたいだけど、今日の夕方までには帰ることにしました。
久しぶりの山の空気はとても綺麗で気持ちいいの。いつもタツマイリの村で羊の匂いにまみれているあなたにもこの空気を吸わせたかったな。
今度来るときは羊たちの世話をご近所さんにお願いして家族みんな出来ましょうね。
クラウスもリュカもわたしも、あなたのこといつも思い出していたんですよ。夕方うちに帰ったら、さっそく腕によりをかけておいしいご飯を作るわね。
あなたと子どもたちのヒナワより」
帽子のつばから滴り落ちる雨水で手紙のインクがわずかににじむ。このまま無かったことになれば良いのに・・・今日という日が夢か冗談なら良いのに・・・
突然宿から飛び出したフリントを見て心配になったフエルも連れ、イサクが追いついた。フリントの家に明かりは燈っておらず、手紙を凝視したまま呆然と立ち尽くす彼をを見れば状況はすぐに解った。
「そうか、まだ・・・だったんだ。雨に濡れて風邪、ひいちゃうかもな・・・」
楽観的な物言いが演技であることはフリントにもわかる。二人は今、言い知れぬ不安でいっぱいで、「どうせ大丈夫だろ」という考えがどうにも浮かばない。火事の一件が彼らを弱気にさせているのだろうか。
夕方にこちらに着く予定だったというヒナワたち。トマスがフリントの家のドアを乱暴に叩いたころ、本当ならヒナワたちは帰宅しているはずだった。だが、その時間はヒナワたちはおろか、伝書鳩でさえも家にたどり着いていない。
テリの森に異変があったからだ。
しかし、イサクは昼にヒナワたちを見かけている。彼がこうして当たり前のようにタツマイリにいるのだから、ヒナワたちもまた当たり前のように戻ってきていてもおかしくない筈ではないか?
火事の前にも何かが起こり、伝書鳩もヒナワたちも足止めを食った?
ドラゴの叫び声って?
そのあと聞こえた悲鳴って?
森で一体、何が起こったというのだ?
事情を知っていそうな唯一の存在である鳩は、小さな声を出しながら首を振り、愛嬌を振りまいている。
「ぼく、迎えに行くよ!」
フリントに助けられたフエルは、今度は自分が助ける番だとでも言うかのように意気揚揚と立候補した。
「どこかで雨宿りしてるか、アレックさんの所に戻ってるんだとは思うけど・・・念のために探しに行ったほうが良いな。村のみんなにも手伝ってもらおう。お前は少し休んだほうが良いぞ」
そう言ってイサクとフエルは宿のほうへ向かって走り去った。
一人残されたフリントは降りしきる雨を見上げる。いつもは綺麗な星空なのに、今日は暗くよどんでいて、よく見えなかった・・・・。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その7
第1章〜とむらいの夜〜
-6-
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フリントたちはタツマイリにある唯一の宿屋へと、ライタを運び込んだ。
宿屋と言っても他所から客がくることなどほとんど無く、主人が趣味で立てようなものだったのだが、家を失った親子にとってはここがしばらくの間、新しい家となる。
「終わりましたよ」
ぼうっとしていたところを宿屋の一人娘、テッシーに声をかけられて、まるでたった今眠りからさめたような感覚になった。森の中を夢中で走り回ったフリントとフエルは自分たちでも気づかないうちに、あちこちに軽い擦り傷を負っており、それを手当てしてもらっていたのだ。
「それにしても、こんな大雨は久しぶりですね・・・」
ふと窓の外を見ると雨はザーザーと派手な音とともに降り続けていた。あの分だと山火事ももう消えているだろう・・・。本当に夢だったらなお良かったのに・・・。
テッシーが救急箱を持って部屋から出ると「なあ・・・」と部屋の隅でぼんやりと座り込んでいたトマスが、つぶやくように言った。
「ヒナワさんたちはいつ帰ってくるんだ?森があんなになっちゃって、帰り道危なくないかなあ・・?」
テリの森は多くの木々を焼き払われ、その火を消すために降ったかのようなこの大雨によって、今度は地盤が緩んでいるはずだ。数日間は近づくべきではないだろう。
アレックの家に遊びに行ったヒナワと子供たちは、予定ではそろそろ帰ってくる筈だったが、またしばらくは会えなくなってしまった。
椅子から立ち上がり、一度大きく伸びをすると背骨がめきめきと音を立てた。全然乾ききっていない自前の服に着替え、愛用のテンガロンハットを装着する。どうせまたずぶ濡れになるのだから構いはしない。
「帰るの?」
「ああ」
仕事を終え、突然森まで引っ張り出されて炎とすすにまみれながら妙な動物と戦い、雨にまで打たれて酷く疲れた。部屋を出て、ライタたちにも一声かけようか思案しているちょうどその時、宿のドアが乱暴に開かれた。
「はぁっ、はぁっ・・・ひどい雨だな・・・」
顔を上げるとすぐにフリントとイサクは目が合った。
「あぁ、フリント!ここにいるって聞いて・・・ちょうど良かった」
ずぶぬれのイサクの顔には、普段のひょうきんさが見られない。またどこかで別の面倒事でも起きたのだろうか・・・いちいち頼られるのは悪い気はしないが、今日はぐっすり眠りたい。
「お前、ヒナワさんと子供たちには会ったかい?」
会うも何も、まだ帰ってきていないし森の状態が状態だけに、数日は会えない。と、ついさっきも考えていたところだ。
「・・・・そう・・か・・・・。・・実は俺、昼間、山にきのこを取りに行っててよ。そしたらヒナワさんを見かけたんだ。遠くにチラッと見えただけなんだけどさ。それから、そのあと河原で一休みしてたら、遠くのほうで物凄い・・・そう、ドラゴの叫び声みたいなのが聞こえて、さ・・・・・・」
リュカとクラウスがドラゴに遊んでもらっていたのだろう。フリントは何も心配することは無いと笑おうとしたが、イサクの表情がそうさせてくれなかった。
「そのすぐあとに・・・その、悲鳴が・・・聞こえたような、気が、したんだ・・・・。なぁ・・フリント・・・。ヒナワさんたち、もう家に戻ってる・・よな・・・・?」
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フリントたちはタツマイリにある唯一の宿屋へと、ライタを運び込んだ。
宿屋と言っても他所から客がくることなどほとんど無く、主人が趣味で立てようなものだったのだが、家を失った親子にとってはここがしばらくの間、新しい家となる。
「終わりましたよ」
ぼうっとしていたところを宿屋の一人娘、テッシーに声をかけられて、まるでたった今眠りからさめたような感覚になった。森の中を夢中で走り回ったフリントとフエルは自分たちでも気づかないうちに、あちこちに軽い擦り傷を負っており、それを手当てしてもらっていたのだ。
「それにしても、こんな大雨は久しぶりですね・・・」
ふと窓の外を見ると雨はザーザーと派手な音とともに降り続けていた。あの分だと山火事ももう消えているだろう・・・。本当に夢だったらなお良かったのに・・・。
テッシーが救急箱を持って部屋から出ると「なあ・・・」と部屋の隅でぼんやりと座り込んでいたトマスが、つぶやくように言った。
「ヒナワさんたちはいつ帰ってくるんだ?森があんなになっちゃって、帰り道危なくないかなあ・・?」
テリの森は多くの木々を焼き払われ、その火を消すために降ったかのようなこの大雨によって、今度は地盤が緩んでいるはずだ。数日間は近づくべきではないだろう。
アレックの家に遊びに行ったヒナワと子供たちは、予定ではそろそろ帰ってくる筈だったが、またしばらくは会えなくなってしまった。
椅子から立ち上がり、一度大きく伸びをすると背骨がめきめきと音を立てた。全然乾ききっていない自前の服に着替え、愛用のテンガロンハットを装着する。どうせまたずぶ濡れになるのだから構いはしない。
「帰るの?」
「ああ」
仕事を終え、突然森まで引っ張り出されて炎とすすにまみれながら妙な動物と戦い、雨にまで打たれて酷く疲れた。部屋を出て、ライタたちにも一声かけようか思案しているちょうどその時、宿のドアが乱暴に開かれた。
「はぁっ、はぁっ・・・ひどい雨だな・・・」
顔を上げるとすぐにフリントとイサクは目が合った。
「あぁ、フリント!ここにいるって聞いて・・・ちょうど良かった」
ずぶぬれのイサクの顔には、普段のひょうきんさが見られない。またどこかで別の面倒事でも起きたのだろうか・・・いちいち頼られるのは悪い気はしないが、今日はぐっすり眠りたい。
「お前、ヒナワさんと子供たちには会ったかい?」
会うも何も、まだ帰ってきていないし森の状態が状態だけに、数日は会えない。と、ついさっきも考えていたところだ。
「・・・・そう・・か・・・・。・・実は俺、昼間、山にきのこを取りに行っててよ。そしたらヒナワさんを見かけたんだ。遠くにチラッと見えただけなんだけどさ。それから、そのあと河原で一休みしてたら、遠くのほうで物凄い・・・そう、ドラゴの叫び声みたいなのが聞こえて、さ・・・・・・」
リュカとクラウスがドラゴに遊んでもらっていたのだろう。フリントは何も心配することは無いと笑おうとしたが、イサクの表情がそうさせてくれなかった。
「そのすぐあとに・・・その、悲鳴が・・・聞こえたような、気が、したんだ・・・・。なぁ・・フリント・・・。ヒナワさんたち、もう家に戻ってる・・よな・・・・?」
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>>MOTHER3 のべらいず計画その6
第1章〜とむらいの夜〜
-5-
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「父ちゃん!父ちゃん!!」
テリの森を脱出したフリントとフエルは村はずれの聖堂前でみんなと合流した。シートの上に寝かされたライタはフエルの声に無反応だった。
当然である。寝てたのだから。
「父ちゃんってば!」
ライタは息子に肩をゆすられ、ぼんやりと目を開いた。
「ん・・・・・フエ・・・ル?フエル!無事だったのか!てめー、このやろう・・・すすで真っ黒じゃねーか・・」
かばっと上半身を起こし、ほっと安堵の表情を浮かべる。
「父ちゃんこそ、足をケガしてるじゃないか!」
見るとライタの足首に包帯が巻かれている。しかしライタは躊躇無くその足首をぺしぺしと叩く。
「こんなもんはなぁ、こうしてこうやって、こう・・・イテテテばかやろう!」
「親方、何やってんですか!」
ライタを止めたのはアチャト。ライタの元で大工仕事の修行をしている男だ。ライタは別に、弟子を取ったというつもりは無いのだが。
「まぁまぁ。とにかくフリントが来てくれて助かったよ」とトマスが言う。今回の件をいち早く村に知らせた、彼の功績もまた大きかった。
「二人はガキのころからのケンカ友達だったもんな」
みんなの前で改めて発表されると何となく照れくさく、ライタはそっぽを向いてしまうが、「ありがとよフリント。今日のところは俺の借りにしといてくれや」と礼は忘れない。
「親方のありがとうなんて始めて聞いたかもしれない」
「うるせーな、てめーは!」
「あはは、まったくだ。もしかすると大雨が降るぞ」などとブロンソンが茶化すと、空が見る間に雲で覆われていく。
「ありゃ・・・これは・・・・」
示し合わせたかのように、雨は静かに降り出した。
「この雨で火が消えてくれると良いね・・・」
トマスの意見に、今回は全員がうなづいた。テリの森は依然、炎を練り上げ、煙を吹き散らしている。タツマイリの村にそんな大規模な火災に対抗するすべは無く、天に任せるのみなのだ。
「ここに居ちゃ冷えちまう。とにかく村に戻ろう」
しとしとと降りつづける雨は火事を消してくれる助け舟であるはずなのに、何となく村人たちの気は重かった。
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「父ちゃん!父ちゃん!!」
テリの森を脱出したフリントとフエルは村はずれの聖堂前でみんなと合流した。シートの上に寝かされたライタはフエルの声に無反応だった。
当然である。寝てたのだから。
「父ちゃんってば!」
ライタは息子に肩をゆすられ、ぼんやりと目を開いた。
「ん・・・・・フエ・・・ル?フエル!無事だったのか!てめー、このやろう・・・すすで真っ黒じゃねーか・・」
かばっと上半身を起こし、ほっと安堵の表情を浮かべる。
「父ちゃんこそ、足をケガしてるじゃないか!」
見るとライタの足首に包帯が巻かれている。しかしライタは躊躇無くその足首をぺしぺしと叩く。
「こんなもんはなぁ、こうしてこうやって、こう・・・イテテテばかやろう!」
「親方、何やってんですか!」
ライタを止めたのはアチャト。ライタの元で大工仕事の修行をしている男だ。ライタは別に、弟子を取ったというつもりは無いのだが。
「まぁまぁ。とにかくフリントが来てくれて助かったよ」とトマスが言う。今回の件をいち早く村に知らせた、彼の功績もまた大きかった。
「二人はガキのころからのケンカ友達だったもんな」
みんなの前で改めて発表されると何となく照れくさく、ライタはそっぽを向いてしまうが、「ありがとよフリント。今日のところは俺の借りにしといてくれや」と礼は忘れない。
「親方のありがとうなんて始めて聞いたかもしれない」
「うるせーな、てめーは!」
「あはは、まったくだ。もしかすると大雨が降るぞ」などとブロンソンが茶化すと、空が見る間に雲で覆われていく。
「ありゃ・・・これは・・・・」
示し合わせたかのように、雨は静かに降り出した。
「この雨で火が消えてくれると良いね・・・」
トマスの意見に、今回は全員がうなづいた。テリの森は依然、炎を練り上げ、煙を吹き散らしている。タツマイリの村にそんな大規模な火災に対抗するすべは無く、天に任せるのみなのだ。
「ここに居ちゃ冷えちまう。とにかく村に戻ろう」
しとしとと降りつづける雨は火事を消してくれる助け舟であるはずなのに、何となく村人たちの気は重かった。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その5
第1章〜とむらいの夜〜
-4-
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あまりモタモタはしていられない。
フリントは自分の腰くらいの高さの炎は迂回せずに、強引に突っ切りながらライタの小屋を目指した。れいの虫が火をつけて回っている以上、遠回りなどしていられない。フエルを助け出しても戻れなくなる可能性があるのだ。
それにしても、今日ほど新鮮な空気を渇望したことはない。
幸い、今のところ煙に囲まれることはなかったが、それでも炎は新鮮な空気を次から次へと奪い去り、どうしても息苦しい。深く呼吸しようとすると胸やけがするし、煙や灰を吸い込んでしまうと人助けどころではなくなる。
見慣れていたはずの、ライタの小屋へいたる景色が赤黒くゆがんでいく。
もうちょっとだ・・・。
さっきから目が痛くて涙が出てくるのだが、きつく瞬きした先にライタの小屋が見えた。と、同時に2階の窓からフエルが顔を出しているのも見える。悪いことに、小屋はそこら中から煙を吹いている。
フリントは息を止めて猛然と走り、躊躇することなく小屋のドアを体当たりしてぶち壊した。小屋の中はあちらこちら燃え上がっていて、死ぬほど暑い。
「フエル!フエル!!」
大声を出したつもりだが、実際にはガラガラと異音が出ただけだった。タンを吐き捨てながら(人の家なのに!)、二階へあがっていく。
窓のすぐそばにフエルが小さくしゃがみこんでいた。うたた寝していて目がさめたら家中が火の海で腰を抜かした・・そんなところだろう。
すぐに助け出そうとしたが、そのとき、背後に気配を感じた。
見たことのある二つのものがくっついた、異形。
それは、虫のような羽根を生やしたネズミだった。
「何だ・・・?こりゃあ・・・??」
ネズミはギチギチを歯を鳴らしながらホバリングしていたが、突然フリントめがけて突進してきた。炎を恐れるでもなく、人間から逃げるでもない、悪意ある攻撃に見えた。フリントはとっさに身をかがめて攻撃をかわし、そのついでに熱でめくれ上がった床板を一枚、力いっぱい剥ぎ取った。先端が焼いたスルメのように湾曲した、1メートル半ほどの板切れでネズミを横殴りにぶっ飛ばすと、ネズミは壁に叩きつけられて「チゥ・・・」と小さな断末魔をあげる。
絶命したわけではなさそうだし、その正体も気になるところではあるが今はかまってるひまは無い。フリントは炎を飛び越え、意識朦朧としたフエルをジャケットでかばいながら大急ぎで小屋を出た。
脱出するとほとんど同時に、小屋はガラガラと音を立て、粉塵を巻き上げながらもろくも崩れ去った。
フリントとフエルはそのさまを呆然と見守った。
「あ、ありがとう!真っ黒のフリントさん!」
とつぜんフエルが大きな声を出す。見ると、フエル自身が真っ黒ではないか。
ライタの小屋が大量のすすを撒き散らしたおかげで二人は全身真っ黒になっており、お互いの間抜けな姿を見て声を出して笑った。
・・・・・・などと和んでいる場合ではない。
「そうだ、父ちゃんに僕の無事を伝えないと」
一歩間違えていれば命を落としていたと言う危険な状況にあったに関わらず、何とも他人事のようにフエルは元気だった。
「よし、それじゃあ急いで戻ろう」
「うん」
フリントはフエルの手を取って、タツマイリの村を目指した。
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あまりモタモタはしていられない。
フリントは自分の腰くらいの高さの炎は迂回せずに、強引に突っ切りながらライタの小屋を目指した。れいの虫が火をつけて回っている以上、遠回りなどしていられない。フエルを助け出しても戻れなくなる可能性があるのだ。
それにしても、今日ほど新鮮な空気を渇望したことはない。
幸い、今のところ煙に囲まれることはなかったが、それでも炎は新鮮な空気を次から次へと奪い去り、どうしても息苦しい。深く呼吸しようとすると胸やけがするし、煙や灰を吸い込んでしまうと人助けどころではなくなる。
見慣れていたはずの、ライタの小屋へいたる景色が赤黒くゆがんでいく。
もうちょっとだ・・・。
さっきから目が痛くて涙が出てくるのだが、きつく瞬きした先にライタの小屋が見えた。と、同時に2階の窓からフエルが顔を出しているのも見える。悪いことに、小屋はそこら中から煙を吹いている。
フリントは息を止めて猛然と走り、躊躇することなく小屋のドアを体当たりしてぶち壊した。小屋の中はあちらこちら燃え上がっていて、死ぬほど暑い。
「フエル!フエル!!」
大声を出したつもりだが、実際にはガラガラと異音が出ただけだった。タンを吐き捨てながら(人の家なのに!)、二階へあがっていく。
窓のすぐそばにフエルが小さくしゃがみこんでいた。うたた寝していて目がさめたら家中が火の海で腰を抜かした・・そんなところだろう。
すぐに助け出そうとしたが、そのとき、背後に気配を感じた。
見たことのある二つのものがくっついた、異形。
それは、虫のような羽根を生やしたネズミだった。
「何だ・・・?こりゃあ・・・??」
ネズミはギチギチを歯を鳴らしながらホバリングしていたが、突然フリントめがけて突進してきた。炎を恐れるでもなく、人間から逃げるでもない、悪意ある攻撃に見えた。フリントはとっさに身をかがめて攻撃をかわし、そのついでに熱でめくれ上がった床板を一枚、力いっぱい剥ぎ取った。先端が焼いたスルメのように湾曲した、1メートル半ほどの板切れでネズミを横殴りにぶっ飛ばすと、ネズミは壁に叩きつけられて「チゥ・・・」と小さな断末魔をあげる。
絶命したわけではなさそうだし、その正体も気になるところではあるが今はかまってるひまは無い。フリントは炎を飛び越え、意識朦朧としたフエルをジャケットでかばいながら大急ぎで小屋を出た。
脱出するとほとんど同時に、小屋はガラガラと音を立て、粉塵を巻き上げながらもろくも崩れ去った。
フリントとフエルはそのさまを呆然と見守った。
「あ、ありがとう!真っ黒のフリントさん!」
とつぜんフエルが大きな声を出す。見ると、フエル自身が真っ黒ではないか。
ライタの小屋が大量のすすを撒き散らしたおかげで二人は全身真っ黒になっており、お互いの間抜けな姿を見て声を出して笑った。
・・・・・・などと和んでいる場合ではない。
「そうだ、父ちゃんに僕の無事を伝えないと」
一歩間違えていれば命を落としていたと言う危険な状況にあったに関わらず、何とも他人事のようにフエルは元気だった。
「よし、それじゃあ急いで戻ろう」
「うん」
フリントはフエルの手を取って、タツマイリの村を目指した。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その4
第1章〜とむらいの夜〜
-3-
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「おい!ライタ!!しっかりしろ!」
うつぶせに倒れていたライタを起すと、彼はゆっくりと目を開いた。
「フリント・・・トマスも・・・ち・・くしょう・・・ゴホッ・・・・・あいつら、やっつけてもやっつけても出てきやがる・・」
「あいつら・・・??」
ライタが力なく指差した方向に、なにやら小さな黒い影が落ちている。
「・・・何だコリャ?虫??」
トマスがそれを突付いてみるが、動かない。死んでいるようだ。しかしトマスもフリントもそんな虫は見たことがない。いや、特に変わった形をしているわけではなく、ちょっと大きめのハエのような虫なのだが・・・・。
「わからねぇ。でも、こいつ・・らが、森・・に、火を・・・・つけてまわってんだ」
「この虫が??」
口から小さな火の玉を吐き出し、木々を燃やしているのをライタは目撃したという。片っ端から叩き潰しはするのだが、かなりの数が飛び回っているらしく、それに一度ついた炎はそう簡単には消えてくれない。今はまだ火の回りが遅いが、この虫が活発に放火をしてまわればそうも言ってられなくなる。現に、トマスの目には山火事の進行が速くなっているのだ。
豚面があけた箱にはこの虫が入っていたのだろうか・・?フリントの中で、怒りがドンドン込み上げてくる。
「それより・・・フリントよぉ・・・・・ゴホッ。フエルがまだ小屋にいる・・筈な・・・んだ・・。頼む・・・・」
虫退治に夢中になってたのだろう。ライタらしいと言えばライタらしい。
フエルはフリントの親友であるライタの息子であり、リュカとクラウスの大事な友だちでもある。それはつまり、フリントにとっても大事な子供なのだ。命の二つや三つほど賭けるには充分すぎるほどの。
「わかった。任せろ。トマスはライタを連れて先に戻っていてくれ」
「うん。ぜったい戻って来るんだよ」
「当たり前だ」
つづく
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「おい!ライタ!!しっかりしろ!」
うつぶせに倒れていたライタを起すと、彼はゆっくりと目を開いた。
「フリント・・・トマスも・・・ち・・くしょう・・・ゴホッ・・・・・あいつら、やっつけてもやっつけても出てきやがる・・」
「あいつら・・・??」
ライタが力なく指差した方向に、なにやら小さな黒い影が落ちている。
「・・・何だコリャ?虫??」
トマスがそれを突付いてみるが、動かない。死んでいるようだ。しかしトマスもフリントもそんな虫は見たことがない。いや、特に変わった形をしているわけではなく、ちょっと大きめのハエのような虫なのだが・・・・。
「わからねぇ。でも、こいつ・・らが、森・・に、火を・・・・つけてまわってんだ」
「この虫が??」
口から小さな火の玉を吐き出し、木々を燃やしているのをライタは目撃したという。片っ端から叩き潰しはするのだが、かなりの数が飛び回っているらしく、それに一度ついた炎はそう簡単には消えてくれない。今はまだ火の回りが遅いが、この虫が活発に放火をしてまわればそうも言ってられなくなる。現に、トマスの目には山火事の進行が速くなっているのだ。
豚面があけた箱にはこの虫が入っていたのだろうか・・?フリントの中で、怒りがドンドン込み上げてくる。
「それより・・・フリントよぉ・・・・・ゴホッ。フエルがまだ小屋にいる・・筈な・・・んだ・・。頼む・・・・」
虫退治に夢中になってたのだろう。ライタらしいと言えばライタらしい。
フエルはフリントの親友であるライタの息子であり、リュカとクラウスの大事な友だちでもある。それはつまり、フリントにとっても大事な子供なのだ。命の二つや三つほど賭けるには充分すぎるほどの。
「わかった。任せろ。トマスはライタを連れて先に戻っていてくれ」
「うん。ぜったい戻って来るんだよ」
「当たり前だ」
つづく
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>>MOTHER3 のべらいず計画その3
第1章〜とむらいの夜〜
-2-
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森の中はあちこちから火の手が上がっていたが、あまり乾燥していないせいか、火の回り自体はそんなに速くない。ライタの小屋まで往復するくらいの余裕は充分にありそうだ。とはいえ、いつ炎に囲まれるか知れないので二人は慎重に、かつ、大急ぎでライタの小屋を目指した。
「おい・・トマス。ありゃ何だ?」
遠くの方に人影のようなものが見えた。しかしライタでもフエルでもないようで、しかも何やらあたりをキョロキョロと見回していて非常に怪しい。
二人は気付かれないように近づいていく。木が燃える音、倒れる音などがひっきりなしに聞こえてくるため、二人の足音が気付かれることはなかった。
そこにいたのは見慣れぬ人物だった。銀色で炎を反射してギラギラしてはいるものの、デザイン自体に派手さはない服装で、それよりも何よりも目を引いたのは、顔につけた豚の面であった。
「何あれ?何あれ?はやってるの?フリント」
少なくともタツマイリの村でははやっていないし、見たこともない。
豚面は足元に置いてある小さな金属製の箱のふたを開いた。中から何かが出てきたように思えたが、小さすぎて見えなかった。ますます怪しいではないか。
フリントは飛び出した。その豚面が森の火災に関連した人物であると確信していた。
「危ないっ」
ふいにトマスに脚を掴まれ、そのまま顔面から突っ伏してしまった。
「トマス!離せ!!」
そう言った瞬間、すぐ目の前が真っ赤に燃え上がった。フリントの身長の倍ほどはある大きな枝が、炎をまとったまま落下してきたのだ。フリントは即座に立ち上がり、後ずさった。炎はそばの枯葉を栄養にしてぐんぐん大きくなり、とても豚面を追いかけられる状況ではない。
「くっ・・・」
「大丈夫?」
「あぁ・・すまない。助かったよ」
豚面はあっという間に視界から消えた。
「段々火の回りが速くなってるような・・・」
トマスがつぶやく。森の中にいては全体の状況をつかむことは難しいが、普段から些細なことにも敏感なトマスは、目前の状況から全体像を憶測するのが誰よりも上手い。それを正確に相手に伝えることがあまりにも下手なのが玉にキズではあるが。
「よし、急ごう」
森の中は当然、舗装などされておらず、火が邪魔で思うように進めない。焦りだけが募っていく。
何なのだこれは。
焚き火などから発生した山火事なら、燃えるのは一箇所のはずだ。それが大きく広がっていくのが普通ではないか。なのに、テリの森を襲う炎はあまりにも不自然だ。
誰かが火をつけて回っているとしか考えられない。犯人は先ほど見かけた豚面であろうが、こんなことをして何になると言うのだ?
森が無くなればタツマイリの村人たちは困る。食料が減り、洪水などの発生率も上がるだろう。だが、それが誰かの利益になるとは思えない。人助けと称して親切を売りに来るか?それは森を燃やしてまで実行するほど価値のある行商とは思えない。
不可解だった。
不愉快だった。
もしこれでライタとフエルの身に何かあったら、村の連中に何かしらの損害が出たら、その時は誰を責めれば良い?誰の顔面に拳を浴びせれば良い?誰を怨めば良い?
ふざけるんじゃない。どうしてこんな目に遭わなきゃならないのか。
テリの森は全体が木と土で出来ているわけではなく、2割くらいは岩山になっており、当然、その周囲に木は密集していない。岩が剥き出しになってちょっとした広場のようになっている場所がいくつかある。
彼を見つけたのは、そんな場所のひとつに二人がたどり着いたときだ。
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森の中はあちこちから火の手が上がっていたが、あまり乾燥していないせいか、火の回り自体はそんなに速くない。ライタの小屋まで往復するくらいの余裕は充分にありそうだ。とはいえ、いつ炎に囲まれるか知れないので二人は慎重に、かつ、大急ぎでライタの小屋を目指した。
「おい・・トマス。ありゃ何だ?」
遠くの方に人影のようなものが見えた。しかしライタでもフエルでもないようで、しかも何やらあたりをキョロキョロと見回していて非常に怪しい。
二人は気付かれないように近づいていく。木が燃える音、倒れる音などがひっきりなしに聞こえてくるため、二人の足音が気付かれることはなかった。
そこにいたのは見慣れぬ人物だった。銀色で炎を反射してギラギラしてはいるものの、デザイン自体に派手さはない服装で、それよりも何よりも目を引いたのは、顔につけた豚の面であった。
「何あれ?何あれ?はやってるの?フリント」
少なくともタツマイリの村でははやっていないし、見たこともない。
豚面は足元に置いてある小さな金属製の箱のふたを開いた。中から何かが出てきたように思えたが、小さすぎて見えなかった。ますます怪しいではないか。
フリントは飛び出した。その豚面が森の火災に関連した人物であると確信していた。
「危ないっ」
ふいにトマスに脚を掴まれ、そのまま顔面から突っ伏してしまった。
「トマス!離せ!!」
そう言った瞬間、すぐ目の前が真っ赤に燃え上がった。フリントの身長の倍ほどはある大きな枝が、炎をまとったまま落下してきたのだ。フリントは即座に立ち上がり、後ずさった。炎はそばの枯葉を栄養にしてぐんぐん大きくなり、とても豚面を追いかけられる状況ではない。
「くっ・・・」
「大丈夫?」
「あぁ・・すまない。助かったよ」
豚面はあっという間に視界から消えた。
「段々火の回りが速くなってるような・・・」
トマスがつぶやく。森の中にいては全体の状況をつかむことは難しいが、普段から些細なことにも敏感なトマスは、目前の状況から全体像を憶測するのが誰よりも上手い。それを正確に相手に伝えることがあまりにも下手なのが玉にキズではあるが。
「よし、急ごう」
森の中は当然、舗装などされておらず、火が邪魔で思うように進めない。焦りだけが募っていく。
何なのだこれは。
焚き火などから発生した山火事なら、燃えるのは一箇所のはずだ。それが大きく広がっていくのが普通ではないか。なのに、テリの森を襲う炎はあまりにも不自然だ。
誰かが火をつけて回っているとしか考えられない。犯人は先ほど見かけた豚面であろうが、こんなことをして何になると言うのだ?
森が無くなればタツマイリの村人たちは困る。食料が減り、洪水などの発生率も上がるだろう。だが、それが誰かの利益になるとは思えない。人助けと称して親切を売りに来るか?それは森を燃やしてまで実行するほど価値のある行商とは思えない。
不可解だった。
不愉快だった。
もしこれでライタとフエルの身に何かあったら、村の連中に何かしらの損害が出たら、その時は誰を責めれば良い?誰の顔面に拳を浴びせれば良い?誰を怨めば良い?
ふざけるんじゃない。どうしてこんな目に遭わなきゃならないのか。
テリの森は全体が木と土で出来ているわけではなく、2割くらいは岩山になっており、当然、その周囲に木は密集していない。岩が剥き出しになってちょっとした広場のようになっている場所がいくつかある。
彼を見つけたのは、そんな場所のひとつに二人がたどり着いたときだ。
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>>MOTHER3 のべらいず計画その2
第1章〜とむらいの夜〜
-1-
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「フリント!フリント!!フリントーーー!」
ドアを乱暴に叩く音とともに聞こえるのは、トマスの声だ。相変わらずうるさい。
ここはタツマイリの村の中心からやや外れた場所にある、フリントの家。妻のヒナワと子供たちは義父の家に居るので、ここしばらく、こちらは静かなものだった。一仕事終えたフリントはベッドの上で大の字になり、ぼんやりと天井を眺めていたのだが、外でわめくトマスの声に休息を邪魔されたのだった。
「火事だよ火事だよ火事も火事!!テリの森がぼうぼうめらめら燃えてるんだよーーーっ!!」
トマスは村一番の声量の持ち主で、しかもただ無闇に大きいだけでなく、よく通る。夜中などは特に、狼の遠吠えにも勝るのではなかろうか。それだけなら別段なんの事は無いのだが、ゴシップ好きときているので困るのだ。ちょっとしたことでも地球が終わりそうな勢いでわめき散らすものだから、彼の言うことを一々真に受けて一緒に大騒ぎすると後でバカを見る。トマスの言うことは話半分に聞く程度がちょうど良いというのが、村の住人たちの共通の認識だ。
火事というのもどうせ、誰かがボヤ騒ぎでも起して煙が見えただけのことだろう。
「早くしないと大変なんだよフリントー!森だよ森だよもりもり!森が燃えてるんだよーっ!」
トマスは尚も叫びながらドアを叩きまくる。
「ったく!なんだってこの平和な村で鍵なんかかけちゃってるんだよフリントーー!」などと勝手なイチャモンをつけ、ドアを殴りつけながらノブをガチャガチャと回したり押したり引いたりしているらしいが、突然、がきんっ!という音とともに静かになった。
「あーもう!・・・・・・なんでこんな大変なときに取れちゃうかなー!」
このままではそのうちドアを破壊したり、窓を割ったりしかねない。トマスにとって他人の家が無事かどうかよりも、自分の持ってきたニュースの方が大事である。まぁ、その「他人の家」も翌日にはニュースのネタになっているのだろうが。
「待て、待て、トマス!すぐ行くから!」
フリントは別に焦らしているつもりもなかったのだが、ただ着替えるというだけの時間がトマスにはもったいないようだ。テーブルの上に放り出してあった愛用のテンガロンハットをぐいと被り、玄関を開けるとドアがトマスの頭にぶつかった。
「いてて・・って、寝ぼけてる場合じゃないぞ!テリの森が大火事なんだよ!こんな大変なときこそ、あんたみたいな向こう見ずなナイスガイの出番じゃないか!きてくれよフリント!」
まったく、勝手なことを言ってくれる。向こう見ずなのは確かにそうなのだが、ボヤ騒ぎくらいで一々大騒ぎしないで欲しいものだ。といっても、この村では誰もが大騒ぎするような事件は今のところ起きたことがないのだが・・・。
トマスはフリントの手首をきつくつかむと、物凄い勢いで走り出した。小柄なトマスの体のどこに、このありあまるパワーが隠れているのだろうか。
村の中央広場にまで出ると、他の村人たちも飛び出していた。トマスの大騒ぎっぷりに誰もかれもがやや呆れ顔である。
当のトマスはというと、村人たちの軽い野次にはまったく反応せず、目もくれず、とにかく走った。
テリの森の方を見やると、なるほど確かに昇る煙が見える。しかし詳しく観察しているヒマは無い。フリントはトマスに手首がしびれそうなほどきつく握られ、ほとんど全力疾走させられているのだ。
息は上がり、脚がもつれそうになり、目が回る。
と、トマスが急にその足を止めたのでフリントは思わず前方につんのめって転びそうになったが、手首を引かれたために助かった。その代わり肩が外れるかと思ったが。
「見ろ!見ろ!フリント!!」
テリの森は目前。
森は見慣れぬデコレーションを施されていた。
灰色と、黒の煙があちこちから立ち上っている。それも、とんでもない量だ。高い木々の隙間から、赤い炎もちらりと確認できた。
ボヤ騒ぎどころの話ではない。正真正銘の山火事。それも同時多発的な。
「な・・何だこりゃあ・・・・」
これを食い止める術などあるのか?フリントには何一つ思いつかなかった。
「行くぞフリント!」
そう言ってトマスは燃え盛る森の中へと駆けて行く。
「おい!どうするつもりだトマス!」
「わかんないけど!!とにかく行くんだよ!」
広場にはあらかたの村人が集まっていたが、ライタの姿は見えなかった。森の中の小屋で暮らしているライタが村にいないということは、つまり取り残されているということだ。ライタの息子のフエルも・・・。
フリントは焦っていた。
何の覚悟もなく、冗談半分で聞いていた「火事」という事実が、確かな現実として目前にさらされている。トマスが、フリントが、村人が、初めて目の当たりにする「本当の事件」が今、そこで起きている。汗が吹き出し、鼓動が早くなり、息が荒くなるのは何も全力疾走してきたからだけではなかった。
続く!?
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ドアを乱暴に叩く音とともに聞こえるのは、トマスの声だ。相変わらずうるさい。
ここはタツマイリの村の中心からやや外れた場所にある、フリントの家。妻のヒナワと子供たちは義父の家に居るので、ここしばらく、こちらは静かなものだった。一仕事終えたフリントはベッドの上で大の字になり、ぼんやりと天井を眺めていたのだが、外でわめくトマスの声に休息を邪魔されたのだった。
「火事だよ火事だよ火事も火事!!テリの森がぼうぼうめらめら燃えてるんだよーーーっ!!」
トマスは村一番の声量の持ち主で、しかもただ無闇に大きいだけでなく、よく通る。夜中などは特に、狼の遠吠えにも勝るのではなかろうか。それだけなら別段なんの事は無いのだが、ゴシップ好きときているので困るのだ。ちょっとしたことでも地球が終わりそうな勢いでわめき散らすものだから、彼の言うことを一々真に受けて一緒に大騒ぎすると後でバカを見る。トマスの言うことは話半分に聞く程度がちょうど良いというのが、村の住人たちの共通の認識だ。
火事というのもどうせ、誰かがボヤ騒ぎでも起して煙が見えただけのことだろう。
「早くしないと大変なんだよフリントー!森だよ森だよもりもり!森が燃えてるんだよーっ!」
トマスは尚も叫びながらドアを叩きまくる。
「ったく!なんだってこの平和な村で鍵なんかかけちゃってるんだよフリントーー!」などと勝手なイチャモンをつけ、ドアを殴りつけながらノブをガチャガチャと回したり押したり引いたりしているらしいが、突然、がきんっ!という音とともに静かになった。
「あーもう!・・・・・・なんでこんな大変なときに取れちゃうかなー!」
このままではそのうちドアを破壊したり、窓を割ったりしかねない。トマスにとって他人の家が無事かどうかよりも、自分の持ってきたニュースの方が大事である。まぁ、その「他人の家」も翌日にはニュースのネタになっているのだろうが。
「待て、待て、トマス!すぐ行くから!」
フリントは別に焦らしているつもりもなかったのだが、ただ着替えるというだけの時間がトマスにはもったいないようだ。テーブルの上に放り出してあった愛用のテンガロンハットをぐいと被り、玄関を開けるとドアがトマスの頭にぶつかった。
「いてて・・って、寝ぼけてる場合じゃないぞ!テリの森が大火事なんだよ!こんな大変なときこそ、あんたみたいな向こう見ずなナイスガイの出番じゃないか!きてくれよフリント!」
まったく、勝手なことを言ってくれる。向こう見ずなのは確かにそうなのだが、ボヤ騒ぎくらいで一々大騒ぎしないで欲しいものだ。といっても、この村では誰もが大騒ぎするような事件は今のところ起きたことがないのだが・・・。
トマスはフリントの手首をきつくつかむと、物凄い勢いで走り出した。小柄なトマスの体のどこに、このありあまるパワーが隠れているのだろうか。
村の中央広場にまで出ると、他の村人たちも飛び出していた。トマスの大騒ぎっぷりに誰もかれもがやや呆れ顔である。
当のトマスはというと、村人たちの軽い野次にはまったく反応せず、目もくれず、とにかく走った。
テリの森の方を見やると、なるほど確かに昇る煙が見える。しかし詳しく観察しているヒマは無い。フリントはトマスに手首がしびれそうなほどきつく握られ、ほとんど全力疾走させられているのだ。
息は上がり、脚がもつれそうになり、目が回る。
と、トマスが急にその足を止めたのでフリントは思わず前方につんのめって転びそうになったが、手首を引かれたために助かった。その代わり肩が外れるかと思ったが。
「見ろ!見ろ!フリント!!」
テリの森は目前。
森は見慣れぬデコレーションを施されていた。
灰色と、黒の煙があちこちから立ち上っている。それも、とんでもない量だ。高い木々の隙間から、赤い炎もちらりと確認できた。
ボヤ騒ぎどころの話ではない。正真正銘の山火事。それも同時多発的な。
「な・・何だこりゃあ・・・・」
これを食い止める術などあるのか?フリントには何一つ思いつかなかった。
「行くぞフリント!」
そう言ってトマスは燃え盛る森の中へと駆けて行く。
「おい!どうするつもりだトマス!」
「わかんないけど!!とにかく行くんだよ!」
広場にはあらかたの村人が集まっていたが、ライタの姿は見えなかった。森の中の小屋で暮らしているライタが村にいないということは、つまり取り残されているということだ。ライタの息子のフエルも・・・。
フリントは焦っていた。
何の覚悟もなく、冗談半分で聞いていた「火事」という事実が、確かな現実として目前にさらされている。トマスが、フリントが、村人が、初めて目の当たりにする「本当の事件」が今、そこで起きている。汗が吹き出し、鼓動が早くなり、息が荒くなるのは何も全力疾走してきたからだけではなかった。
続く!?
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>>MOTHER3
稍微文字列変換してみる試験。ネタバレ+妄想全開なのでこれからプレイする人はスルーしてください( ´∀`)
稍微文字列変換してみる試験。ネタバレ+妄想全開なのでこれからプレイする人はスルーしてください( ´∀`)
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ノーウェア島、タツマイリ村。テリの森を越えた先・・・ヒナワの父、アレックの家。
この物語は、ここから始まる・・・・・。
〜プロローグ〜
ドンドン!ドンドン!!
乱暴なノックの音が部屋の中に広がる。リュカの安眠を妨げようとするその音は、クラウスの大声とともにどんどん大きくなる一方だ。しかし、リュカも負けていない。ちょっとやそっとの物音でパッと目が覚めるようなことは決して、絶対、誰がなんと言おうと、ありえないのだ。
「リュカーーーッ!いつまで寝てるんだ!起きて遊ぼうぜ!」
ドンドン!ドンドン!!
ドアには鍵がかかってるわけではないのだが、どうせ揺すったところで簡単に起きるリュカではない、ということをクラウスは知っていた。
「早く!ドラゴが赤ん坊を連れてきてるぞ!かーわいいぞーー!!早く来いよ!待ってるぞ!!」
ぴたりとノックの音が止まり、部屋の中に静寂が蘇る。あぁ、これでもうひと眠りできる──
リュカが起きだしたのはそれから30分ほどたってからだった。
そういえばクラウスが呼んでたっけ・・・?あ、そうだ。ドラゴが赤ん坊を連れてきてるとか何とか・・・?
リュカはベッドから跳ね起き、寝癖爆発のまま部屋を出て1階へと降りていった。
「おはよう、おねぼうリュカさん。クラウスはとっくに起きて遊んでるわよ」
そう言って出迎えたのは双子であるリュカとクラウスの母、ヒナワだ。
「うん。ぼくも・・・」
まだ少しばかり眠気の残ったまぶたをこすり、大きなあくびを見せる。
「パジャマのままで遊びに行くつもり?ちゃんと着替えていらっしゃい。顔も洗って」
「うん」
ごはんの準備をしている母の隣で、バシャバシャと冷たい水を顔中に浴びるとさすがに目が覚めた。
「はい、タオル」
ヒナワの手からタオルを引っつかむと、顔を拭きながらバタバタと2階へ上がる。天窓からのぞく陽の光がまぶしい。
手早く着替えを済ませ、一応かがみもチェック。なかなかの男前だ。ちょっぴり明後日の方向に向かった癖毛はチャームポイントである。
階段を下りながら「いってきます!」と大声で告げ、外へと飛び出した。
強烈な日差しに一瞬、目がくらむ。真っ白な視界に徐々に風景を描き出されていった。
縄張りを主張するサクが申し訳程度に建物を囲んでいる。一応その中が庭ということなのだが、あまり役に立っているようには見えない。現に、2羽のニワトリはサクの向こうで走り回ってるし、それを眺めてる一頭のブタはちょっと迂回すればサクの向こうに出ることができる。今この瞬間、たまたま中にいるだけで、逃げようと思えばいつでも逃げれるのだ。そういえばどうして逃げないんだろう?
一応、一頭の牛だけはしっかりとした小屋に入っているが。
サクの向こうには青々とした草原が続き、700メートルほど先に森が見える。リュカは大きく息を吸い込んだ。もともと都会暮らしをしていたわけではないが、やはりこういうのどかな場所の空気はおいしい。子供でもそれくらいはわかるものだ。
「おお、ねぼすけ。起きたか」
声をかけたのはヒナワの父、アレックだ。黒ぶちの(ちょっぴりダサい)メガネが太陽の光を反射してきらきらしている。大きな棒で牛をマッサージしているところだった。
「今日帰るんだったな・・・寂しくなるのう」
優しい声でそう言いながら、あごにたくわえたひげを撫でる。
「ほれ、クラウスはドラゴのところじゃ。行っておいで」
「うん!」
家を出て左手に見える道(といっても舗装されてるわけでもなく、ただ草の生えていない部分を道と呼んでいるだけだが)を進んでいくと、岩山に囲まれた大きな広場に出る。
そこに住んでいるちょっと変わった動物・・・それがドラゴだった。
ドラゴの特徴は、まず、とにかくでかい。恐ろしく巨大である。アレックの家の牛などお話にならない大きさだ。
そしてその皮膚。トカゲの皮をそのまま巨大化したようなスケールの大きい網目模様が印象的だ。皮膚を辿っていくと大きな手足に鋭い爪。口にはまた、さも恐ろしげな牙が並ぶ。どんな生き物だって、この手足で引き裂かれて、その巨大なあごに捕まったら一巻の終わり。
早い話が、ドラゴという生き物は、つまるところ、わかり易い言葉でいえば、すなわち、いわゆる、「ドラゴン」である。
だが、その見た目とは裏腹に非常に人懐こく、おとなしい生き物である。ドラゴに襲われた人間など今まで一人たりともいないし、子どもたちの遊び相手にもなってくれる。
「おーい!」
リュカが走りながら声を上げる。向こうの方にちょろちょろと走り回るクラウスの姿が見える。それに気付いたクラウスのほうでも「早く来いよー」と、ぴょんぴょん跳ねながらリュカに応えた。そのすぐ横には巨大なドラゴが一頭、仰向けに倒れていた。
「あー、くたびれた。ドラゴたちとずっとケンカごっこしてたんだよ」
クラウスはそう言って、倒れこんだドラゴ相手ににVサインなど送っている。
「リュカもいっしょにやろうぜ」
「うん」
ケンカごっこというのは人間の親子もよくやるやつで、小さな子供が親に向かってパンチやキックを繰り出し、親は「やられたー」などと言って降参する、あの遊びだ。このドラゴたちは、そんな遊びに付き合ってくれるのだ。
倒れていたドラゴがゆっくりと起き上がり、挑発的な視線をリュカに送り、フンッと盛大に鼻息を鳴らす。かかって来なさいとでも言っているようだ。
「よーし・・・」
二度ほど屈伸運動をして、リュカはおもむろにドラゴめがけて走り出した。クラウスも「いけー!」と声援を送る。
「でーーーい!!」
掛け声とともに、リュカは思いっきり体当たりをぶちかました。弾力のある皮膚に激突するのは、巨大なマットに突っ込んでいくような感じに少しにている。
見事なタックルを受けたドラゴは、低い唸り声を上げながらズズンとあっけなく倒れ、苦しそうにちょっとだけもがき、そして動かなくなった。双子が「どーだ!」と言わんばかりの笑みを浮かべると、そばにいた小さなドラゴも楽しそうな声を出す。
「あ、その子だね?」
「うん。ほら、おいで」
クラウスがしゃがみこんで小さなドラゴを手招きすると、どうにもおぼつかない足取りで近づいてきた。
「な?すごいカワイイだろ?」
「わぁ・・・」
親ドラゴは大地に突っ伏しながら、我が子を見守っている。
「ね、抱いて良い?」
リュカが話し掛けると、親ドラゴは喉を鳴らし、ゆっくりとウインクした。了承を得たということにしておき、その赤ちゃんドラゴを抱き上げる。大きさはちょうどアレックの家のニワトリと同じくらい。双子の手にはちょっと大きいし重いのだが、ひんやりとしたウロコの下の何とも言えない温かさは、苦労して抱き上げるだけの価値を思わせる。
その時だ。
「どけどけどけどけーーーい!オケラ様のお通りだーい!ケンカごっこときいちゃ黙っちゃいられねーぜ!どいつもこいつも叩きのめしてやる!邪魔立てすると、ただじゃおかねぇぞ!」
と、言ってるような気がするオケラが走りこんできた。リュカとクラウスは全部が全部ではないが、何となく動物の言ってることが分かる・・・気がするのだ。
威勢良く場に乱入したオケラは「まずはお前たちからだ!」などと言いながら(多分)、クラウスのほうに飛びかかった。
顔めがけて飛んできた小さな敵に向かって、クラウスは反射的に平手打ちを炸裂させる。オケラはあっけなく地面に叩きつけられ、ひっくり返ってしまった。
「案外、骨のある奴だったな。またいずれ胸を貸してやっても良いぜ。じゃあまたな・・・・アニキ」
と、ニヒルに笑いながら(多分)、体を起してすばやくいずこかへと走り去った。あんなののアニキになってもなあ・・・と思いながらも、そんなに悪い気はしない。
「二人とも、ゴハンですよ。今日はふわふわオムレツだよ」と声をかけたのはヒナワ。ふわふわオムレツはクラウス・リュカの一番の好物だ。
「やりぃ!じゃあ、ドラゴ、またな!」
「バイバイ!」
二人はドラゴたちに手を振ると全速力で家へと走っていく。
「オケラ踏んじゃったけど、大丈夫だったかしら・・・」
「お母さんの好きな食べ物は何なの?」
「ふわふわオムレツよ」
「じゃあ、ぼくたちとおんなじ?気があうね!」
「わしだってふわふわオムレツじゃ!」
テーブルにオムレツの皿が並べられると、リュカとクラウスはまるで競争するかのような勢いでオムレツを食べ始めた。
「ほら、そんなに慌てないの。そうそう、ご飯を食べ終わったら帰り支度をしますからね。帰り道は森の中を通るから早めに出発しないとね」
「えー。もっと遊びたいのに」
「また今度ね」
「もう子供たちだけでも遊びに来られるじゃろう」
「うん!」
間髪入れずにクラウスが返事をする。自分たちだけで来れるとなれば、好きなときに好きなだけドラゴにも会えるのだ。
「リュカも大丈夫じゃな?」
「ほひおんあよ」
「なんだって?」
「リュカ、食べるか喋るかどっちかになさい」
口の中のものを喉に流し込み、「もちろんだよ!」と元気良く答える。
食事を終え、子供たちを部屋に上げると、ヒナワは伝書鳩の脚にそっと手紙を結んだ。夫・フリントへ向けたもので、今日の夕方か夜頃にはタツマイリ村に到着するであろう事を記してある。
伝書鳩を放すとまっすぐ森の方へと向かって飛んでいく・・・・・・と、なにやらよく分らない、銀色の丸っこい飛行物体が見えた・・・気がした・・・・・・。
続きを隠す
ノーウェア島、タツマイリ村。テリの森を越えた先・・・ヒナワの父、アレックの家。
この物語は、ここから始まる・・・・・。
ドンドン!ドンドン!!
乱暴なノックの音が部屋の中に広がる。リュカの安眠を妨げようとするその音は、クラウスの大声とともにどんどん大きくなる一方だ。しかし、リュカも負けていない。ちょっとやそっとの物音でパッと目が覚めるようなことは決して、絶対、誰がなんと言おうと、ありえないのだ。
「リュカーーーッ!いつまで寝てるんだ!起きて遊ぼうぜ!」
ドンドン!ドンドン!!
ドアには鍵がかかってるわけではないのだが、どうせ揺すったところで簡単に起きるリュカではない、ということをクラウスは知っていた。
「早く!ドラゴが赤ん坊を連れてきてるぞ!かーわいいぞーー!!早く来いよ!待ってるぞ!!」
ぴたりとノックの音が止まり、部屋の中に静寂が蘇る。あぁ、これでもうひと眠りできる──
リュカが起きだしたのはそれから30分ほどたってからだった。
そういえばクラウスが呼んでたっけ・・・?あ、そうだ。ドラゴが赤ん坊を連れてきてるとか何とか・・・?
リュカはベッドから跳ね起き、寝癖爆発のまま部屋を出て1階へと降りていった。
「おはよう、おねぼうリュカさん。クラウスはとっくに起きて遊んでるわよ」
そう言って出迎えたのは双子であるリュカとクラウスの母、ヒナワだ。
「うん。ぼくも・・・」
まだ少しばかり眠気の残ったまぶたをこすり、大きなあくびを見せる。
「パジャマのままで遊びに行くつもり?ちゃんと着替えていらっしゃい。顔も洗って」
「うん」
ごはんの準備をしている母の隣で、バシャバシャと冷たい水を顔中に浴びるとさすがに目が覚めた。
「はい、タオル」
ヒナワの手からタオルを引っつかむと、顔を拭きながらバタバタと2階へ上がる。天窓からのぞく陽の光がまぶしい。
手早く着替えを済ませ、一応かがみもチェック。なかなかの男前だ。ちょっぴり明後日の方向に向かった癖毛はチャームポイントである。
階段を下りながら「いってきます!」と大声で告げ、外へと飛び出した。
強烈な日差しに一瞬、目がくらむ。真っ白な視界に徐々に風景を描き出されていった。
縄張りを主張するサクが申し訳程度に建物を囲んでいる。一応その中が庭ということなのだが、あまり役に立っているようには見えない。現に、2羽のニワトリはサクの向こうで走り回ってるし、それを眺めてる一頭のブタはちょっと迂回すればサクの向こうに出ることができる。今この瞬間、たまたま中にいるだけで、逃げようと思えばいつでも逃げれるのだ。そういえばどうして逃げないんだろう?
一応、一頭の牛だけはしっかりとした小屋に入っているが。
サクの向こうには青々とした草原が続き、700メートルほど先に森が見える。リュカは大きく息を吸い込んだ。もともと都会暮らしをしていたわけではないが、やはりこういうのどかな場所の空気はおいしい。子供でもそれくらいはわかるものだ。
「おお、ねぼすけ。起きたか」
声をかけたのはヒナワの父、アレックだ。黒ぶちの(ちょっぴりダサい)メガネが太陽の光を反射してきらきらしている。大きな棒で牛をマッサージしているところだった。
「今日帰るんだったな・・・寂しくなるのう」
優しい声でそう言いながら、あごにたくわえたひげを撫でる。
「ほれ、クラウスはドラゴのところじゃ。行っておいで」
「うん!」
家を出て左手に見える道(といっても舗装されてるわけでもなく、ただ草の生えていない部分を道と呼んでいるだけだが)を進んでいくと、岩山に囲まれた大きな広場に出る。
そこに住んでいるちょっと変わった動物・・・それがドラゴだった。
ドラゴの特徴は、まず、とにかくでかい。恐ろしく巨大である。アレックの家の牛などお話にならない大きさだ。
そしてその皮膚。トカゲの皮をそのまま巨大化したようなスケールの大きい網目模様が印象的だ。皮膚を辿っていくと大きな手足に鋭い爪。口にはまた、さも恐ろしげな牙が並ぶ。どんな生き物だって、この手足で引き裂かれて、その巨大なあごに捕まったら一巻の終わり。
早い話が、ドラゴという生き物は、つまるところ、わかり易い言葉でいえば、すなわち、いわゆる、「ドラゴン」である。
だが、その見た目とは裏腹に非常に人懐こく、おとなしい生き物である。ドラゴに襲われた人間など今まで一人たりともいないし、子どもたちの遊び相手にもなってくれる。
「おーい!」
リュカが走りながら声を上げる。向こうの方にちょろちょろと走り回るクラウスの姿が見える。それに気付いたクラウスのほうでも「早く来いよー」と、ぴょんぴょん跳ねながらリュカに応えた。そのすぐ横には巨大なドラゴが一頭、仰向けに倒れていた。
「あー、くたびれた。ドラゴたちとずっとケンカごっこしてたんだよ」
クラウスはそう言って、倒れこんだドラゴ相手ににVサインなど送っている。
「リュカもいっしょにやろうぜ」
「うん」
ケンカごっこというのは人間の親子もよくやるやつで、小さな子供が親に向かってパンチやキックを繰り出し、親は「やられたー」などと言って降参する、あの遊びだ。このドラゴたちは、そんな遊びに付き合ってくれるのだ。
倒れていたドラゴがゆっくりと起き上がり、挑発的な視線をリュカに送り、フンッと盛大に鼻息を鳴らす。かかって来なさいとでも言っているようだ。
「よーし・・・」
二度ほど屈伸運動をして、リュカはおもむろにドラゴめがけて走り出した。クラウスも「いけー!」と声援を送る。
「でーーーい!!」
掛け声とともに、リュカは思いっきり体当たりをぶちかました。弾力のある皮膚に激突するのは、巨大なマットに突っ込んでいくような感じに少しにている。
見事なタックルを受けたドラゴは、低い唸り声を上げながらズズンとあっけなく倒れ、苦しそうにちょっとだけもがき、そして動かなくなった。双子が「どーだ!」と言わんばかりの笑みを浮かべると、そばにいた小さなドラゴも楽しそうな声を出す。
「あ、その子だね?」
「うん。ほら、おいで」
クラウスがしゃがみこんで小さなドラゴを手招きすると、どうにもおぼつかない足取りで近づいてきた。
「な?すごいカワイイだろ?」
「わぁ・・・」
親ドラゴは大地に突っ伏しながら、我が子を見守っている。
「ね、抱いて良い?」
リュカが話し掛けると、親ドラゴは喉を鳴らし、ゆっくりとウインクした。了承を得たということにしておき、その赤ちゃんドラゴを抱き上げる。大きさはちょうどアレックの家のニワトリと同じくらい。双子の手にはちょっと大きいし重いのだが、ひんやりとしたウロコの下の何とも言えない温かさは、苦労して抱き上げるだけの価値を思わせる。
その時だ。
「どけどけどけどけーーーい!オケラ様のお通りだーい!ケンカごっこときいちゃ黙っちゃいられねーぜ!どいつもこいつも叩きのめしてやる!邪魔立てすると、ただじゃおかねぇぞ!」
と、言ってるような気がするオケラが走りこんできた。リュカとクラウスは全部が全部ではないが、何となく動物の言ってることが分かる・・・気がするのだ。
威勢良く場に乱入したオケラは「まずはお前たちからだ!」などと言いながら(多分)、クラウスのほうに飛びかかった。
顔めがけて飛んできた小さな敵に向かって、クラウスは反射的に平手打ちを炸裂させる。オケラはあっけなく地面に叩きつけられ、ひっくり返ってしまった。
「案外、骨のある奴だったな。またいずれ胸を貸してやっても良いぜ。じゃあまたな・・・・アニキ」
と、ニヒルに笑いながら(多分)、体を起してすばやくいずこかへと走り去った。あんなののアニキになってもなあ・・・と思いながらも、そんなに悪い気はしない。
「二人とも、ゴハンですよ。今日はふわふわオムレツだよ」と声をかけたのはヒナワ。ふわふわオムレツはクラウス・リュカの一番の好物だ。
「やりぃ!じゃあ、ドラゴ、またな!」
「バイバイ!」
二人はドラゴたちに手を振ると全速力で家へと走っていく。
「オケラ踏んじゃったけど、大丈夫だったかしら・・・」
「お母さんの好きな食べ物は何なの?」
「ふわふわオムレツよ」
「じゃあ、ぼくたちとおんなじ?気があうね!」
「わしだってふわふわオムレツじゃ!」
テーブルにオムレツの皿が並べられると、リュカとクラウスはまるで競争するかのような勢いでオムレツを食べ始めた。
「ほら、そんなに慌てないの。そうそう、ご飯を食べ終わったら帰り支度をしますからね。帰り道は森の中を通るから早めに出発しないとね」
「えー。もっと遊びたいのに」
「また今度ね」
「もう子供たちだけでも遊びに来られるじゃろう」
「うん!」
間髪入れずにクラウスが返事をする。自分たちだけで来れるとなれば、好きなときに好きなだけドラゴにも会えるのだ。
「リュカも大丈夫じゃな?」
「ほひおんあよ」
「なんだって?」
「リュカ、食べるか喋るかどっちかになさい」
口の中のものを喉に流し込み、「もちろんだよ!」と元気良く答える。
食事を終え、子供たちを部屋に上げると、ヒナワは伝書鳩の脚にそっと手紙を結んだ。夫・フリントへ向けたもので、今日の夕方か夜頃にはタツマイリ村に到着するであろう事を記してある。
伝書鳩を放すとまっすぐ森の方へと向かって飛んでいく・・・・・・と、なにやらよく分らない、銀色の丸っこい飛行物体が見えた・・・気がした・・・・・・。
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